バンドでの名古屋遠征の模様は、事細かく書いたが、再び名古屋での演奏以外を備忘録として、個人的に記録しておこう。
思えば関西を飛び出して、演奏するという思考回路がこれまではほとんど働かなかったのが本音である。
悪く言えば、井の中の蛙状態が長く続いてきた。
良く言えば、気心が知れた仲間と見知りのお客さんの前で、好き放題出来るのは、余計な緊張感も無く、楽だった。
そんな停滞した思考回路が動く事に役立ったものは、ズバリ、ネットのチカラである。
このブログはもとより、ソーシャルなんたらという世界に足を突っ込んでみたら、アレッという間に他府県の人やこれまですれ違っていた人、永らく音信不通になっていた人と繋がりが出来たのだ。
大阪以外に、京都や神戸、果ては東京、本場シカゴとも繋がる。そして今回の名古屋も先に書いた様にそのひとつである。
もっと以前、そう路上演奏に励んでいた時期にこんな媒体が普及していればと、悔やむ事もある。
「遠征」などとたいそうな書き様だが、ボクの場合は、違う土地に触れる機会が得られる一石二鳥のチャンスなのだ。
昨年の東京の際も、念願の靖国神社や皇居周辺を歩けた。
名古屋のライヴが決まった時、すぐに家族で一泊する事になった。
片道3時間あれば行ける距離だから、とんぼ返りも可能な訳だが、それでは家族に申し訳が立たない。
文化、言葉、景色、味覚、街には明らかに違うところが見つけられる。
そんな異なる感覚を味わった後に、見る生まれ育った大阪の街はまたいつもとは違って映る気もする。
そんな名古屋での目当てをひとつに絞ることにした。
味覚への再チャレンジ!
実は、名古屋東海地区の味に関して、若い頃のトラウマが根強く残ったままだったのだ。
若い頃とは、学生時代と15年以上前のライブでの出来事である。
関西圏の食文化とは、大きく異なることぐらいは知っていたが、最初の名古屋の味との出逢いは、学生時代である。
学生とは、何を隠そうボクは、大学生だった時期がある。
結局は途中でドロップアウトしてしまう事になるが、バブル華やかな頃のお話だ。
某京都の仏教系の大学に論文だけで合格してしまうという甘っちょろい大学生活が始まった。
隠れてブルースらしきものは聴いていたが、ドラムなぞまさかのちにやる事になるなんて思ってもいなかった。
初めて出来た友人の誘いで、いわゆるディスコへ通い、デパートのバーゲンの行列に並んで、DCブランドの洋服をなけなしのバイト代で買っていた・・・。
そんな友人の一人に、岐阜から来たボンボンが居た。
彼のワンルームマンションは、恰好の溜まり場となった。
賭けトランプや賭け麻雀、通学そっちのけである。
そんなある夜、小腹が空いたと彼に告げると、何やら鍋でグツグツとやりだしたわけだ。
味噌の匂い・・・。
味噌ラーメンか?と思いきや、鉢の中に赤黒く染まったうどんが泳いでいる。
「味噌煮込みうどん、旨いよ」
ひとすすり・・・。「うわっ!なんやこれっ!」
名古屋の方、すいません。
この時の不味さのトラウマをずっと19歳から43歳まで引きずって生きて来ました。
その間に再チャレンジの機会が巡って来たのが、当時組んでいたバンドでの名古屋ライヴ。
アイパー大西も一緒です。
路上演奏で知り合った女性が名古屋に帰郷した為にブッキングが実現したものだった。
「味噌カツの美味しいお店を案内しますよ。」と誘導される。
メンバーは、全員味噌カツを注文したが、ボクは頑として拒否し、ハヤシライスを指差した。
旨いと頬張るメンバーを尻目にボクはハヤシライスを口に運んだ・・・。
「うわっ!」まただ・・・。
ハヤシライスにも甘い味噌が紛れ込んでいた。
結局、関西には味付けに赤味噌(八丁味噌)を頻繁に使うという習慣がほとんど無い。
この瞬間に元々が食わず嫌いなボクの味覚基準は決定づけられてしまう事になる。
しかし、今回の名古屋遠征では、その克服と別の名古屋食文化を食すべく意を決して向かった。
そういう訳で、名古屋グルメを記したい。
結論を先に言えば、ボクのトラウマは見事に晴れたのだ。
まず最初に名古屋についたのが、ちょうど昼時だったので、我が家と同乗の三木君と徒歩でそれらしきお店を探す。
事前に、調べあげていない。
栄の方角に向かって歩く。
新栄の交差点に差し掛かったところで、スパゲティーの看板が目に入る。
前述のドラマー氏から、
「あんかけスパ」の推薦を受けていた事を思い出し、店の前のメニューを見る。
「とにかく、入るか!」
地下にあるお店のドアを開けると、ほぼ満席で、店員さんが忙しくホールを行き来していて、テーブル席で老若男女みんな大皿に盛られたスパゲティー(?)を黙々と食べているではないか・・・。
メニューを見ても、何が何やら想像もつかないので、各人それぞれ写真を頼りに注文。
ボクは、『よくばりセット』
三木君の注文は何だったか?
家人は、激辛メキシカンなんとかっての。
息子は、お子様セット。
で、目の前に運ばれて来たのが、これっ!
よくばりセット?
三木君は・・・。
どひゃ!てんこ盛りだ。
元大食漢のボクにも、手に負えない重量感。
メニュー通り、欲張り過ぎたか?
ボクも三木君も必死で完食。
家人は、約半分でギブアップ。
息子はお口に召さなかったのか、道中のおやつがたたったのか、カルピスだけ飲み干し、あとのスパゲティー、ケチャップライスなどほとんど残して、おまけの玩具に気を奪われた。
噂に聞いていたが、まずは名古屋のサービス精神の一端を垣間見た。
実はまだこの時点では、ボクの抱えるトラウマは消えていない。
次の日記から、徐々にそれが剥がれていくのだ。