「濃いなぁ〜」
ライヴやジャムなどで、時折いや頻繁に投げかけられる言葉だ。
即座な返答に困って、頭を掻きながら苦笑いをするしかないのだが、果たしてその投げかけられた言葉の真意はどこにあるのかといつも迷うのである。
褒め言葉とは、ひねくれたボクには額面通りに考えられないのである。
先日のシカゴロックのジャムでも、最後の締めの曲は、スモーキー・スマザーズの「I Can't Judge Nobody」だった。
チヒロ君がマイクを握って楽しそうに唄っていた。
この曲を知る幾人かは、サビ部分で大合唱するのだが、何故盛り上がるのだろうとポカンと口を開ける人も居たかも知れない・・・。
ひとつも「濃い」と自分達を思った事などは無い。
他のブルースが好きな人と何も違いはないと思っているのではあるが、やはり「濃いわ〜」と言われてしまう。
当然ボクは、まだ聴いていない触れていないブルースなんて幾らでもあるひよっこだ。
ブルースに問わず、音楽や芸術などから感じる受け止め方は、人それぞれに生まれ異なることは必然だ。
どれが良い、悪いという烙印を最初から押してしまえば、もうそれでおしまいになるだろう。
同じく先日のジャムに久し振りにギターを持って参加した昔馴染みとの短い会話でも少しだけ温度差を感じた。勿論長い付き合いだし、一時期は一緒にバンドで活動した中だから、共通項の方が大半を占めるだろうが。
とにかく『濃い奴ら』でひとくくりにされる事には不快とは言わないまでも、他に例えは無いモノかな?
物事をある視点から突き詰めようとすると、必ず視野が狭くなり、他の事に目も耳も向かないという弊害は確かにあることは分かる。
でもボクはどんな世界でも突き詰めようとしている人には理由の如何に関わらず魅力を感じる。
探求、追求の念が失われていわば現状維持の惰性で動いているものには、興味がない。
ちょっと大袈裟に論じたが、我が身にこの事をもう一度問いたいのである。
随分昔の事、ある男と「年を取って惰性で演奏する様になったら、きっぱり辞めよな?」
そう固く誓った事があった。
そうしてある年齢に達した今の自分とを照らし合わせてみて、あの時感じた惰性で事を運んでいないだろうか?と疑心暗鬼に陥る事がよく起こる。
以前もそういう感情が抑えられなくなって、自分勝手に「もうおれブルースやめる」なんて出来もしない啖呵を切った事もあった。
その時は、面と向かって周囲の誰からも指摘されはしなかったが、ボクの知らないところでは批難の的になっていたらしい。全く恥ずかしい話だ。
探究心が旺盛で魅力的な人は、キャリアや年齢そしてその出来不出来などは度外視して、ボクにとって尊敬の的である。
脈略の無い話を書いている気がするが、たまには心の中に眠らせている言葉を吐露してみたくなったのだ。
そんな風に濃いと同じ様に言われているだろう仲間が新しい試みに動いている現場を観て来た。
先日土曜日の事である。
前夜はジャムのホスト役を演じて、午前様になり(大抵こういう後は寝付きが悪い)、翌日の職場には寝不足気味で出社した。
その夜、彼らが先月からある場所で試みている形態をやはり観てみたいと思った。
現在の演奏機会を多く共にする20代の二人。
彼らの野心的な奔放さが近頃うらやましい。
ボクはこの20年以上の間に出来た堅い殻の中をなかなか破れずにいて、彼らの柔軟さは見習いたい。
その平成育ちの二人とは、久米はるきと三木あきらの二人である。
二人の間にも少しばかり年齢の差はあるが、もう40代半ばに今年入るボクとの世代間の開きは意外に大きい。
貪欲にブルースの本場に飛び込むし、その手の情報収集の早さから、近年は教えてもらう事の割合の方が多くなったくらいだ。
一定のブルースの枠にとらわれない活動展開の試行錯誤を昨年から始めたという。
ブラックミュージックならいわゆる90年代以降のヒップホップやR&B(リズム・アンド・ブルースやなくて、アール・アンド・ビー・・・)というカテゴリーは彼らにとっては原体験だろうし、現在進行形だろう。
その試みは、オープンマイクという形式(ボクがやっているジャムセッションとは異なる)で、あらゆる音楽を受け入れるというパッケージだ。
控えるホストバンドは、1ドロップスと名乗るルーツ・レゲエ・バンド。
旧知であるドラマーのブギマシンが、満を持して長年温めていたバンドである。
メンバーチェンジもあった様だが、今年も活動を継続するとの事だ。
このメンバーを久米君が加わって仕切る。
アメリカ村の最南部にある、バーがその舞台。
Coolabah
http://coolabah.jp/
ホームページをクリック閲覧してもらったら分かる様に、オーストラリアとニュージーランドがテーマのスポーツバーである。
少し遅れて入った店内の会話は、当然英語が飛び交う。
店の奥に機材を集めて、ちょうど1ドロップスの3人がレゲエを演奏している。
合間に店専属の黒人DJがヒップホップをループさせる。かと思えば、アコースティックギター片手の白人青年がお客さんも一緒に熱唱出来る誰もが知っているヒットソングや古いスタンダードを披露したりと、要は何でもありだ。
一方音楽に興味の無い他の客は、グラス片手にお喋りに夢中だし、若い白人女性の誕生日祝いのバースデーソングの大合唱も突然始まる。
オープンマイクでは、女性ヴォーカリストを迎えたり、ボクもいつものシャッフルでちょっぴり参加しました。
そんなこんなでワイワイ、ガヤガヤとパーティー気分に煽られて、そのままの勢いで10人以上連れ立って、土曜日で賑わう心斎橋のカラオケボックスへ千鳥足でそのまんま移動(ちなみにボクはしらふ)。
朝5時まで、散々に唄い踊ることになりました(笑)
おかげで、予定していた日曜日の家庭のやりくりは全てキャンセルという羽目に・・・。
ちょっと以前の路上演奏後の打ち上げを思い出しました。
ブギマシン、岡部キング、三木君の1ドロップスの演奏動画をひとつボクのYouTubeチャンネルにアップしました。
http://youtu.be/y7vy1GEeKTM
月に一度の予定で定期開催との事。
午後20時〜23時頃までだそうです。
入場も無料也。
勿論、今後もブルースに対する試行錯誤も続けますよ。
彼らの活動とオーヴァーラップすれば、新しい道が広がる可能性も同時に感じた。
「濃いっ!」
いつか本当に最高の褒め言葉としてのそこを目指して・・・。