シカゴロックは、天神橋筋商店街から一本筋違い天満宮裏口の路地にある。
陸渡御の真っ最中の群衆を掻き分け目指すが、DJ用に200枚ほど詰め込んだバッグが隣の人のスネにぶつかるたび、軽いメンチを切られる。
「すいません、すいません」を何度か言って、通してもらい脱出。
いつもは、なかなか存在感のあるジミーリードとエディーテイラーの看板も今夜ばかりは目立たない。店先で風に何枚も揺れるライブチラシもこの調子なら糠に釘だろう・・・。
ライブの前に始まる予定のマッドハープ加藤氏のハーモニカ教室も同じ憂き目に逢ってしまったようだ。
肝心の生徒が来ないまま予定時間は過ぎ、暇つぶしの雑談とライブの用意で来店者を待つ。
それまでの間、DJ遊びで萎えそうな意気込みを鼓舞する。この夜コンビを組むことになったチヒロ君のリクエストで、WOLF盤スモーキー・スマザーズのシャッフルに合わせて皆で唄い、ギターを弾き、ハーモニカを吹く。妙に楽しい瞬間で、5人子供のように笑い合う。実はライブよりこういうひと時が愉快だったりするもんだ。
「天神祭のせいで、お客が来ない」と責任転嫁してはならない。
お客が来ないのは、こちらの宣伝努力の不足だ。
祭りだろうが、嵐だろうが、槍が降ろうが、足を運んでもらう努力が単におろそかだっただけだ。
そうは、分かっていながら表の露店の軒を着飾った若者達が闊歩するのを横目で見ると何ともはや恨めしい。どうやら花火が打ち上がる音も響いている。
ライブ開始リミットが迫った頃、有り難く常連さん達が駆けつけてくれた。
というわけで、どう転ぶのか全く見当もつかないチヒロ君のギター1本とボクのドラムのみという初の試みを始めよう。
チヒロ君は家庭内水害事故で再起不能と言われた愛機テレキャスターを持参している。
ところがよく見ればボディーが丸裸。外したピックガードがどこかへ紛失したという理由がまたもや彼らしい話。音が鳴るかどうかも分からんなんて言うから始末が悪い。
ともかく、ボクの役目は彼がおもむろに弾き始めるブルースに合わせるのみだ。
チヒロ君が家でギターを無心に弾く姿をそのまま持って来れれば良いと決めた。
アイパー大西のハーモニカと江上君のギターにも途中から入ってもらい、結局ハーモニカ教室が不成立になったマッドハープ氏にも参加してもらい、「Blues at Home」的ライブになりました。
きっと天神さん帰りに立ち寄った飲み客の方にはアンコールなんて掛け声も頂き、感謝します。
出来不出来は自ら判断すべきではないが、個人的にはもうこれ以上叩きませんと思えるくらい楽しんだ。
伊勢から来たアイパーを我が家に連れ立って深夜帰宅。早朝、物音で目覚めるとアイパーはきちんと布団をただんで、耳元で「帰りますわ」といって出て行った。
偶然、昨夜はマッドーハープ氏とアイパーとよく似た内容の話を別々にした。
「やりたいことをやらせてくれる環境がある限り、やり続けんとあかんね?」
枕元の携帯にチヒロ君から珍しく『お疲れさんメール』が入っていて、
これは次回もあるのかな?
こんな夜に駆けつけて頂いた皆さん、有り難うございます。
おまけに、誕生日祝いにバースデーケーキまで頂戴した。感謝、感謝。