しつこく昨夜のつづき『亀キチ君の一生』
さて亀の成長に合わせて、こちらも年齢を重ねる。
部屋の中で遊ぶよりもランドセルを放り投げ、連日、外で日が暮れるまで泥まみれになって帰る日々である。
幸い玄関を出れば、ダッシュで数十秒の距離に大阪で3番目に広い府営の緑地公園があり、春夏秋冬遊べた。
緑も豊かで、木を揺すれば、カナブンやカミキリムシがぱらぱらと落ちてきたし、根元を掘れば、それらの幼虫がポロポロ見つかった。
草むらに入れば、バッタやてんとう虫。池には、フナやコイ、ザリガニもわんさか。
とにかくありとあらゆる動く物は、拾集の対象だ。肩から下げた虫カゴや無ければビニール袋でお持ち帰りだ。
我が家のベランダ、納屋などにはそいつらがお菓子の箱や缶の中で生活するようになった・・・。
ざっと思い浮かぶだけでも『ゲテモノ』揃い。
ザリガニ(アメリカものが主流。とにかく取りまくった。親子3代にわたって繁殖させた。)
ベンジョ虫(いわゆるマルムシ。2階から落としてもピンピンしていた。)
オケラ(駐車場の地べたを掘れば必ず居た。)
ハサミムシ(今だ正式名称知らず。学術名お分かりの方教えて。)
女郎蜘蛛(弟が遠足で持ち帰った代物。これはちょっと可愛く無かった。)
カナブンをはじめとする昆虫各種(夏はカブト虫とクワガタ虫と食べ残しのスイカ。)
アリ(単純明解。ただ巣の構造に興味があっただけ。もちろん見る事は出来ない。)
コウモリ(ある日ベランダに落ちてきた子連れ。ムシカゴで飼った。可哀想で数日後逃がした。)
カブトエビ(近所にあった小さな田んぼに無数にいた。てっきり大きくなったらカブトガニになるものと信じ込んでいた。水槽が酸欠になって全滅。亀キチの餌になった。)
カマキリ(当然たまご付き。当然ふ化して、部屋は子カマキリだらけ。)
カエル各種(卵、おたまじゃくしも含む)
金魚(もちろん夜店産。決して長生きしなかった。)
などなど・・・今じゃすべて触れない代物ばかり。
ハムスター、九官鳥ものち加わる。・・・という訳ですっかりと亀キチの影は薄くなっていく。
亀キチの水槽掃除がだんだん面倒になり、おまけに2センチそこそこだったものが、手の平よりも大きく成長、持て余すようになる。
ある日からは、家の勝手口の野外に追いやられた。
月日は流れて、上のゲテモノ達も姿を消し、再び我が家には亀キチ独り。余りにバカでかくなった彼は、水槽の中で方向転換出来ないくらいの体長になっていた。それもそのはず、最初に天王寺の近鉄百貨店で買った水槽のままなのだ。
そんなある日の事である。
亀キチが来て17年目。前日はどしゃぶりの雨。
なにげに亀キチの水槽を覗くと・・・・
!!
「か、か、かめさん・・・が・・・」
『亀、溺死』
弟を呼び、そっとすくい出してあげた。
丁寧に新聞に包み、あの緑地公園へ。向かう先はある1本の木の根元。
以前から兄弟二人で決めている場所だ。
ここに今まで登場した仲間が眠っているのだ。九官鳥のピーちゃんもザリガニも真っ白いハムスターも。
こうして初代亀キチの一生が終わった。ちなみに『キチ』と男呼ばわりしてきたが、実は彼女だった。
ある日、水槽の砂利の上に白い玉がプカプカ浮いている。「何や?」
「た・ま・ご???」
無精卵を産み落としていたのだ。
ようやく大人になったところだったのだ。
そして現在3代目が実家の片隅で冬眠中なのである。
愛用の亀キチTシャツ!