今日は、3月後半の事から少し話を広げたい。
珍しく映画の話です。
前置きしておきますが、ボクは所謂映画通でも何でもありません。
但し、映画が好きではあります。
学生時代は、なんば辺りの映画館を時折は訪れたり、その後一気に普及した貸しビデオをまとめて借りていた時期もあった。
もう映画館なんて言葉使いは死語でシネコンと巷では言いますね?
慣れ親しんだ経験が今だに抜けきれず、どうにもこのシネコンにまだ体が慣れなていない。
ちょっと以前、映画鑑賞特に同伴者などがあれば、なんばの商店街で豚まんあるいは奮発してマクドナルドなんかをごっそりと持ち込んで途中入場、立ち見、一回の入場券で何度だって観られたもんだ。反対に面白くなければ退出も制限が無かった。平気でタバコの煙がスクリーンを遮ることもしばしば見かけたものだ。
幼い頃の記憶を掘り返せば、親からの事前指示で一目散に空いた席を見つけて走って場所取り、運悪く空席が無かった場合は通路の階段でかじり付いた。
逆に、3本立てなんかの閑散とした劇場に漂うただならぬ雰囲気に遭遇することもしばしばあった。
すっかりそんな劇場は姿を消し、全席指定の入れ替え制、途中入場はもってのほか、持ち込みの飲食はおろか飲食禁止である。
市価よりも割高なアイスクリームやら売り子が席を回ることも遠い昔。
どちらが良いかは個人的には前者だが、その分、座席配置、音響など映画に集中する雰囲気作りは万全とも言える。
さて息子が出来て以来というもの、映画を観る時間など作れない。
レンタルビデオに通う事すらもすっかり忘れてしまった。
今回はネットなどで去年からいち早くその制作風景が予告されていたあの監督の最新作をどうしても観たくなったのだ。
DJANGO UNCHAINED
『ジャンゴ 繋がれざる者』と邦題が付いた。
クエンティン・タランティーノ脚本・監督。
(お約束のカメオ出演も。いや一番目立つ場面・・・)
彼の一連の作品及び関連映画との最初の出逢いは後述するとして、最新作『DJANGO UNCHAINED』のモチーフが俗に言われるところの、
『マカロニ・ウェスタン』であることに期待は高まっていた。
ロゴデザインもお得意の血を連想させる赤に黒い鎖と2人の影。
まずもって、『ジャンゴ』の名前でアンテナがピンと立った。
幼少期、民放各局のゴールデンタイムでは月曜から連日「〜〜ロードショー」や「〜〜映画劇場」のタイトル文字が新聞のラテ欄(ラジオ・テレビ欄)に躍っていた。
深夜帯も名画などが頻繁に放送されていた。
映画館に滅多に行けない家族にとって、家に1台しか無いテレビを点けるこの時間帯は団欒の場であった。
戦後に思春期を迎えた両親にとっても、最大の娯楽は映画であったのだろう。
日本映画、ハリウッド映画、フランス映画、英国作品、イタリア物、ソビエトやポーランドなどの東欧映画、チャンバラ映画からスペクタクル巨編、ラブコメディーだったり文芸作品と、あらゆる国の映画がロードショー又は3本立てなんかで上映されていたと聞く。
そんな幼い日、終わる頃にはきっと瞼が閉じたり開いたりしたのだろうテレビでの吹き替え映画の記憶に残っているのは、上に書いたマカロニ・ウェスタンである。
壮大なハリウッド製作の西部劇とは一線を画す独特な映像世界と撃ち合いシーン。
主に低予算イタリア作品である。
クリント・イーストウッド、ジュリアーノ・ジェンマ(先日CATVで久し振りに観た)などが流れ者のガンマンを演じていた。
モチーフになっている原題『ジャンゴ』
日本タイトルでは「続・荒野の用心棒」
フランコ・ネロ主演である。
(なんとある場面でカメオ出演!劇中気づかなかった。)
過激な暴力描写や人種差別、禁止用語など、何かと作品の度に物議を醸すタランティーノ作品。
今作も意見が真っ二つだ。
パンフレットにもスパイク・リー監督が、激しく抗議をしたとも記されてある。
いずれにしても、個人的意見ではあるが、タランティーノの新作は見応え充分であった。
期待したB級映画オタク的な奇をてらった展開は影を潜め、珍しく緊張感のある3時間余り。良い意味ではぐらかされた。
主演を演じたジェイミー・フォックスは良かった。
心配したレオナルド・ディカプリオも怪演まで今一歩というところか?
最後は幼い頃、腰に玩具の2丁拳銃を差し込みはしゃいだあのヒロイズムな爽快感が帰路に残った。
ちなみに地元シネコンの平日レイトショーという条件もあったが、やっぱりタランティーノ作品は数組程度の入りでした・・・。(前に観たKILL BILLもガラガラだったなぁ)
タランティーノ作品のもう一つ期待するところは、サウンドトラックだろうか。
今回もJames BrownのリミックスやAnthony HamiltonやJim Croceなどが効果的に挿入されていたが、最も劇中耳に残った曲は、このRichie Havens『Freedom』だった。1969年のウッドストックコンサートでも印象に残る曲だ。
さて、タランティーノ作品に折角触れる機会なので、
彼の作品との出逢いについて少し書いておこう。
今作『DJANGO UNCHAINED』は、彼がこの世界に彗星の如く現れ、一部映画ファンのシンボル的な存在になって丁度20年という節目でもあった。
デビューは、1992年公開インディペンデント映画
『Reservoir Dogs』である。
(日本公開翌1993年)
サンダンス映画祭、カンヌ映画祭でも話題をさらったこの映画にボクが出逢うのは、公開後しばらく経ってからのことだ・・・。
誰かに教えてもらって直接ヴィデオを借りたのか、もしくはレンタルしたのだろう。
とにかくこれまでに観た事の無い暴力描写、それはグロテスクなホラームーヴィーなどとは異なり、リアルで痛点を直撃するシーンの連続。
製作に一肌脱いだハーヴィー・カイテル他の出演陣もごく僅か(男性俳優以外出ない)低予算ゆえに知名度も一般に知られていないクレジットだった。
観た方なら記憶にずっと残る本人登場の卑猥な冒頭会話から耳に残るオープニングテーマソングがスタイリッシュに彼らを映し出す。
のち彼をメジャーにする第二弾『パルプ・フィクション』でも多用された時系列が交錯し、点と線がひとつの物語に完結するという手法は斬新であった。
クエンティン・タランティーノなる名前からして素性の分からない人物は、日本映画を含むアジア映画やアニメ、監督などの多大な影響下にあることを本人も包み隠さず公に述べている。
さぁて、「レザボア・ドッグス」何度観たことだろうか?
賛否両論は現在も二分されていると思う。
それこそ嫌悪し、肌に合わず拒否する人もあるだろう。
近作は物足らないと感じるファンも容易に予想出来る。
それくらいこの処女作にはカルト的な印象を残す映像世界があった。
『ジャンゴ』公開直前、道すがら某中古ソフト店を覗いてみると、「レザボア・ドッグス・スペシャルエディション」が安値で一枚並んでいるのを発見し、迷った挙げ句レジに並んだ。
実家に置いたままのヴィデオテープにダビングされ何度も巻き戻しては観たものがあるが、我が家にはもうヴィデオデッキが無いのである。(パルプ・フィクションもそうだな・・・)
流石に3歳児の前では、再生出来ずにボーナスディスクをちらっと観ただけである。
20年。
黒づくめの出演者達の3人が鬼籍の人となった・・・。
Nice Guy Eddie役のクリス・ペン(ショーン・ペンの実弟)の早世はショックだった。
先月、タランティーノは、満50歳を迎えたそうだ。
見事、今年度アカデミー賞では、最優秀脚本賞。
クリストフ・ヴァルツが最優秀助演男優賞を受賞した。
ちなみに、偶然にも我が家のCD棚には、「ジャンゴ」2ヴァージョン収録、
『究極のマカロニウェスタン主題歌大全集』がある・・・。
10年ほど前に衝動買いした物だが、すでに廃盤か・・・?
評価:
映画主題歌,フランコ・ファジーラ,ラオール,ヴィットリオ・ベッツィ,フランコ・モリセッリ,クラウディオ・タッリーノ,クリスティ,カティナ・ラニエリ,ロベルト・フィア,アン・コリン,ロッキー・ロバーツ
キングレコード
---
(2001-07-25)